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第一章 6 赤い瞳の力

 

 

 カーンカーンカーン・・・

 

 

 

 鐘が鳴り響く。空を仰ぐと、鳥が怪しげに空を旋回している。街の広場の方に馬車は入った。

 

 

「お。ちょうどガルス兵の公開処刑がはじまるぜ。今日何人目だ」

 

「予行演習代わりに見ていくか、ガキ?」

 

「こいつちびっちまうんじゃねぇか、はははは!」

 

「処刑・・・」

 

 

 嫌な予感が走る。

 

 マリーに目をやるが、意識を失っているままだ。

 

 こいつだけでも逃がす手段はないか。

 

 舗装の行き届いていない道に、車体が激しく揺れる。

 

 

「ところでどいつの処刑だぁ?」

 

「ガルスの要塞の指揮してた貴族の息子らしいぜ」

 

 

 

 アランは弾かれたように、身をよじって鐘のなる方を見た。

 

 

 

 遠くの広間に処刑台が見える。台に引き出されているのは若い男のように見えた。

 

 

 

 赤銅の髪がなびいている。

 

 

 その時には無意識に叫んでいた。

 

 

 

 

「カリタス!」

 

 

 

 

「おい!動くんじゃねぇ!」

 

 

 荷台の底に頭を打ち付けられて、額が裂ける。

 

 

 振り向き様に拳がまた落ちる。

 

 

 

 瞬間、高揚してくるものを感じた。

 

 

 

「うっっ」

 

 男の動きが止まる。

 

「なんだ、どうした?」

 

 もう一人がアランを見下ろす。

 

 

 

 深紅に光る双眸。

 

 

 

 危険な信号が体を走り、昏倒する。

 

 

「うぐっ」

 

 

 馭者の男達が荷台での異変に気付く。

 

 

 

 アランは素早く何かを唱え縄が解いた。

 

 

「カリタス!!」

 

 

 馬車の周囲にいた人々がアランに振り向く。

 

 

 立ち上がった先に映る処刑台に向けて、両手を高く据える。

 

 

 そして大きく叫んだ。

 

 

 

Galnada straudivarius!

 

 

 

 

 

 閃光が凄まじい勢いで処刑台にとび、光が炸裂した。

 

 

 人々が悲鳴が上がり、騒然となる。

 

 

 処刑台には処刑人達が呆然と立ち尽くす。

 

 

 凄まじい衝撃にもかかわらず、処刑台はそのままだった。

 

 

 

 

「カリタス・フォークが逃げたぞぉぉ!」

 

 

 一気に消耗するとやはり応える。

 

 ひとまず大丈夫だろうか。

 

 ガルナダならたぶんどうにかやってくれるはず。

 

 

 

「おい、あいつを押さえろ!!」

 

 馭者の一人が荷台に飛び移って来る。

 

 

 アランはに突っ伏している少女を振り返る。

 

 今ならこいつも。

 

「マリー、起きろ!」

 

 アランに額に当てられた魔力の反動でマリーはぱっと目を開ける。

 

「逃げろ、マリー」

 

 

「へ?」

 

 そういうと、そのまま思い切りマリーを混乱で人々が右往左往する人ごみの嵐に蹴り落とした。

 

 砂埃にまみれて尻餅をついているその姿がかき消されてゆく。

 

 

「おい!くそ、女を逃がしやがった!」

 

 

 振り返った瞬間に頭に鈍痛が走る。

 

 

 

 意識を手放すと同時に、髪色が濃く染まる。

 

 

「こ、こいつ、ガルス人じゃねぇか!!」

 

 

 馭者は手早く厳重に若い男を縛り上げた。

 

 

 そして昏倒していた男達が目を覚ます。

 

「おい、何があった?」

 

 

「こ、こいつ眼が赤くなって!!」

 

 

 体の自由を取り戻した男達は、倒れた若いガルス人がびくともしなくなったにもかかわらず、一歩退いた。

 

 

「赤目って・・・」

 

 

「おっかねぇ。はやく引き渡しちまおう!」 

 

 

 

 

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