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第一章 7 再会と失踪

 

 

 

あっさり牢の奥の隠し穴を示したアランに呆気にとられる暇もなく、フォークス家の男達はひたすら歩き続けていた。

 

 

いつの間にかに地上にでて、日差しで体力を消耗し始めた頃。

「今のは一体なんだったんでしょう?」

 

 

 遠くの空が一瞬光った気がした。

 

 

「何が起こってるとしても、私たちは先を急いだ方がいい」

 

 

 茂みを掻き分けて登る山の傾斜はどんどんきつくなってきていた。ここのところ晴れ間が多かっただけ、足場はましだ。

 

 

「アラン様は一体どこに向かっているんだ」

 

 

 返答はないが、皆黙々と歩き続けた。

 

 軽々と道無き道を進むアランの背に誰も不思議と不安を覚えない。

 

 足取り一つ一つに迷いは無く、誰もが同じ場所をひとえに追った。

 

 

 

 やっとアランの足取りが遅くなり、少し森の開けた場所にでると、男達もアランもほど同時に驚きの声を挙げた。

 

 そこには先刻、牢で生き別れたはずの主がいたからだ。

 

 

 「カ、カリタス殿下!!!」

 

 

 「お前達!アラン!無事だったのか!」

 

 

 月光が明るく開けた草むらを照らす。

 

 

 

「ガルナダ?」

 

 

 男達が歓喜の声をあげて再会を喜んでいる片側、アランは美しい七色の尾羽をもった聖獣を見た。

 

 

 何重にも重なる声音が返る。

 

 

「久しいな」

 

 直視すれば潰れてしまうだろう漆黒の眼を、さも当たり前に見上げ、眉をひそめた。

 

 

 辺り一面に瓦礫の山。

 

 

「てゆーか、これお前が壊したの?」

 

「私がこんな醜い破壊行為を行う訳がなかろう。私はアランに召還されて務めを果たしたまで」

 

 

「そうだ!心から礼を言う。ガルナダ。それにアラン・・・また生きて会えたな」

 

 赤銅色の髪の精悍な青年が再会の抱擁に手を広げる。

 

 

 アランは静かに退き、青年のまっすぐな双眸を見据える。

 

 

 その静かな反応にカリタスは戸惑い、凝視する。

 

 

 静かにたたずむその姿は義弟そのもの。

 

 

 風で前髪からその瞳が覗く。

 

 

 いつも穏やかに据わっているはずの双眸が異様にいたずらに光る。

 

 

「おまえ・・・」

 

 

 カリタスが眼を見開く。

 

 そこへ側近の男達もあわてて跪いた。

 

「本当です。アラン様がいらっしゃられなければ、私たちも再び殿下にお会いする事が出来ませんでした。」

 

 アランはそれを一瞥して、ガルナダを見上げる。

 

「そのアランて誰だ?」

 

 

 

「?」

 

 すでに呆然としていたカリタスの後ろで、皆がかたまる。

 

 

「あ、あなたはアラン様ではないのですか?!」

 

「おまえはアランを知らないのか、マッタイアス」

 

 聖獣も美しい声音でつぶやく。

 

 

「マッタイアス?」

 

 カリタスは放心して呟く。

 

 

 

「てゆーか俺の家なんで壊れてるの?」

 

 色々なはてなマークが浮上する。

 

 マッタイアスは瓦礫からかすかに香る魔力の揺らめきを手に取った。

 

 

「マリーはどこへいった・・・」 

 

 

 

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